建ちます。
ただし、ローコストという言葉に注意しなければなりません。単に安さを売りにする住宅会社や工務店では、本来、住まいに求められる最低限のクオリティも満たされることはありません。内容を伴った、適正価格であることが重要です。
また、多くの人が注文住宅への憧れを語ると、「建築家に設計を依頼するとコストがかかり過ぎる」などと言われ、真偽を確かめるすべもないままご自身の理想の家づくりをあきらめてしまうようです。
私どもはそうった点を踏まえ、ローコストでありながら優れた品質、デザイン性を備えた住宅を設計することにも取り組んでいます。ここでは、2000万円台前半の工事費で建てた住宅を例に説明していきたいと思います。
加古川市内のこの家は、ご夫婦+お子様2人のための2階建て木造住宅です。お子様は1人はすでに独り立ちしているので、実質3人で子育てはある程度終わったと言えるご家族です。
なので、ご夫婦の理想を最大限叶える設計が求められました。もちろんローコストで。
天井の高い大空間のLDK・インナーガレージ・ご主人のアウトドアの趣味に最適化された収納などを内包する空間は、真上から見ると完全な正方形の形をしています。
これは、複雑で手間のかかる工程は発生するのを避けつつ、最も豊かな空間を生みだすための手法です。
シンプルな形態は、素材を選びません。特にローコスト住宅の場合、将来の維持・メンテナンス費も抑えなくてはなりません。
そういう場合の建材として有効なのが、ガルバリウム鋼板です。この住宅では、屋根・外壁ともにすべてこの素材を採用しています。見た目も現代的でシャープな印象を与え、波上の凹凸が軽快なリズム感をもたらします。塩害にも強いので海が近い立地でも使用できます。
自然素材を使うと、コストが跳ね上がると信じ込まされてしまっている施主様も多くいます。建材を販売するメーカーや、それを扱う工務店はたいてい、自分たちが簡単に施工できる建材や工法を好みます。そうでない建材を使いたくないから上述のような話がでてくるのです。
しかし、実際のところトータルコストで見ると「同じくらいか、むしろ安くなる」というのが相場です。
もちろん贅沢を言えばキリがありませんが、まっとうな商売をしている工務店に工事をお願いすれば問題ありません。
なぜか? 私たち設計事務所が、設計だけでなく工事監理まで含めて請け負うからです。工務店の出してきた見積書を精査して、価格と内容におかしなところがあれば修正してもらいます。
このようにして、プロの目線で修正を経た見積書というのは、極めてまっとうな金額となります。
この家は、紙を素材とした壁紙に漆喰塗装を施しています。また、フローリングは1階、2階ともに無垢フローリングをそれぞれ樹種を分けて(カエデ・ナラ)使用しています。このような使い分けは、手間がかかるようですが、階で分けているだけなのでコストに反映されることもありません。
ただ、やはりこのようなきめ細かなデザインというのは、一般的に面倒くさがられる傾向があるので、コストアップの口実にされやすいのですが、このような場合でも、設計事務所としてきちんと指摘します。
また、フローリングを例にとると、人工的な化粧シートフローリングというものが昨今の主流ですが、これはキズが付きにくくて掃除がしやすいという理由で、実はそれほど安くはありません。また、これらの建材は、キズができたり、めくれなどが生じると、とても硬くてささくれ立っており、補修なども素人では容易にはできません。無垢材なら少し削ってみるなどの簡単な作業で済むので施主様でもじゅうぶんに対応できるでしょう。
室内扉などの木製建具についても同様です。この家では、建具はすべてシナ合板を使用した木製で、やはり人工的な建材とは風合いがちがいます。
見落としがちですが、ドアハンドルなど、既製品では選択の幅が限られていて、色や形もありふれたものばかりです。オリジナルの造作なら、それらも好みに合わせて自由に選べますし、コストもさほど変わりません。
いかがでしょうか。家づくりにこだわるということは、施主様にとって、とても楽しい経験になると思います。もちろん、家にこだわりや理想がない人にとっては面倒くさいだけかもしれません。でも、誰でも思いを巡らせてみれば理想や願望はあるのではないでしょうか。
今回取りあげた住宅も、ランドクルーザープラド70を愛するご主人のためのガレージハウスという側面もあります。ご自身の心としっかり向き合って、もっと自由な発想で、楽しい家づくりを経験していただきたいと思っています。
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