住宅の価格高騰と狭さが子どもを産もうという心理を冷やしているという記事が今朝の日経新聞に載っていた。
私の経験だと、最近の話だが、設計の初期段階で図面をもとに工務店から概算見積をとると、木材費とともに木材高騰費という項目があった。元の木材費とほぼ同額が計上されているので、単純に木材だけでも倍の費用がかかることになる。たしかにこれでは限られた予算で満足のいく仕様の自宅を建築するのはむずかしいだろう。
狭さについても価格高騰が背景にあり、新築マンションでは建築費が上がったぶん面積を減らして販売価格を抑えている例が目立つ。
国が定める「ゆたかな生活」の目安では、夫婦と子ども1人の3人家族の家庭なら65㎡の広さが必要となるが、実際に22年に成約した中古マンションの平均面積は63.59㎡と目安を下まわる。ここに2人目の子どもを望むというのは無理があるので、結果として子どもは1人という選択をする。その状況を受けて、さらに子どもが複数いることを想定した間取りの物件が減るというスパイラルに陥っている。
もちろん、最も直接的な原因は経済的なものであり、賃金を上げたり、持ち家手当の充実などのサポートが必要となるのだが、ここでは住宅取得のあり方について述べたい。
まず、予算が潤沢で都市部で自分の望む場所に土地を確保できて、現在の相場で建築できる方はそうすれば良いだろう。おおいに経済に貢献していただきたい。そして、おそらくここが大半を占めるのであろうが、そこまで予算のない(予算をかけたくない人たちも含む)、それでいて自分の好みの空間を手に入れたいと考えている人たちにとってのおすすめの方法は、都市部ならヴィンテージマンションなどをリノベーションとなるが、少し郊外なら「古民家リノベーション」も考えてみるべきだろう。
ここで言う古民家は一般的な空き家というより、もう少し歴史を感じることができる日本建築、ありていに言えば、古いけど立派な外見の日本家屋とする。
このような建物は、柱や梁など元々の構造体が太く頑丈で、水平・垂直も保っていることが多い。設計段階で構造の検討もしやすい。
そして人口減少する地方では、このような立派な家を親から継ぐかどうか迷っている、あるいは購入しようかで迷っている人がいる。
立地や実際の建物の状態にもよるので一概には言えないが、古民家の改修にはメリットが多い。まず、広い。敷地も広い。マンションだと限られた部屋数の範囲内でしか住みこなしの提案ができないが、戸建ては庭やガレージなど余白の空間が多く、これは子どもがいろいろな趣味をもったりコミュニケーションを育むのに役立つ。親にとってもゆとりある空間で過ごす方が快適なのは言うまでもない。
音の問題も敷地が広いほど寛容でいられる。周囲の視線もそうだろう。また、陽当たりも良ければ言うことない。
私たちは、住まいについてこう考えている。
「家は広ければ広いほどよく、明るければ明るいほどよい。浴室にも太陽の光がそそがれるべきである」
このような考えで家をつくるには、古民家は大きい規模の物件が多いので実現しやすいのではないだろうか。じゅうぶんな広さを確保してから間取りの変更やインテリアの仕様を決め、最終的には親密な和の趣と、それでいて現代的な雰囲気を備えた和モダンの家に仕立てることができれば言うことなしだ。
もちろん昔の家は断熱材など仕込まれていないので、そのままだと冬は冷えて仕方ないだろう。ただ、このような大がかりなリノベーションの場合、壁や床をめくることになるのでその際に断熱材を仕込んでしまえばムダな費用を使わなくてよい。
また、古民家は景観の観点から見ても地域の貴重な資産であるので、上手な使い方をもっと模索していくべきだ。
古民家再生について、住宅としての設計だけでなく、ホテルにリノベーションするなど、地域資産としての活用についても相談にのっているので興味のある方はご連絡いただきたい。