木造非住宅のすすめ


中大規模の木造建築を実現する施主様をサポート

非住宅木造 建築設計

なぜ木造で建てなければいけないのか。

日本の戸建て住宅は木造が90%以上と圧倒的な割合を占めます。私たちも、これまで住宅を設計する際はその快適さ、味わい深い質感、柔らかく繊細なデザインが可能となることから好んで採用してきました。

ですが、その他の非住宅建築物であるビルやマンションなどに目を向けると、ほとんどが鉄筋コンクリート造か鉄骨造です。子供たちが使う小学校や保育園など、木と相性の良さそうな建物でもそうです。

なぜか? それは戦後「木造建築は燃える」という誤った見解のもと、日本の建築教育や実務から非住宅の分野において「木造」という概念を消し去ってしまったからです。その結果、せっかくの優れた技術が使われることなく、今日の無機質な都市景観がつくられてしまいました。木造をメインで扱う住宅業界も、簡易な工法や既製品ばかり取り入れることで職人の技も衰退してしまいました。今となっては、昔ながらの大工さんの技術を継承していくのは、ほとんど絶望的とも言えるでしょう。私たち日本人が、ごく当たり前に大切にしてきた気持ちの良い空間が、今や大金をかけないと手に入らない世の中になってしまったのです。私はその状況を変えたいと思っています。


「用・強・美・健」

木造 建築設計

これまで建築は「用・強・美」の3つの観点から語られてきました。言うまでもなく「用」は実用性、「強」は構造強度、「美」は美的価値です。これからは、この3原則に「健」を加え、「用・強・美・健」とするのが私たちの建築思想です。「健」は健康の健です。高齢化社会に伴い、人生100年とも言われる時代に生きる私たちが、これまで以上に意識し、また、建築設計にも反映させるべきテーマであると考えていることから、このようにしました。もちろん非住宅木造建築物においても同様にこの原則を採用します。木質化された空間ほどこのテーマにふさわしいものはないでしょう。


中大規模建築(非住宅)こそ木造に

特に私たちは中大規模建築を木造で設計することに取り組んでいます。これは非常に珍しいことです。なぜかというと、これまでの建築基準法では実現がむずかしかったからです。それが、2010年の法改正により公共建築(非住宅)においても木材の利用を促進するよう国の方針が定められ、状況が少しずつ変わってきました。今では目まぐるしい速さで大規模木造建築を可能にするよう改訂が重ねられています。ニュースなどでご覧になったことがあるかもしれませんが、大手事業者による木造のマンションやビルが実現しています。ただ、まだまだめずらしい事例であることに変わりなく、それ故に私たちのホームページでも、まだ実例をお見せすることができていません(もうじき完成写真をお見せできます)。もう少しお待ちいただければ、私たちによって実際に公共の学校建築が木造で建てられ、とても良い雰囲気のものであることを実感いただけると思います。それまでは、こうやってイメージパースや過去に設計した住宅の写真などで木造建築の良さや、設計のポイント、コストに関することなどを発信していきたいと思います。


非住宅木造建築の構造

非住宅木造 建築設計

鉄筋コンクリート造や鉄骨造と同じような感覚で中規模以上の木造建築を構造設計してしまうと、コスト的にも非常に不利ですし、無駄に大きな部材を使った見栄えの悪い建物になってしまいます。やはりデザインとコストのバランス感覚が重要なのです。私たちは、まずは「現代における木造のスタンダードを極める」ことを念頭に設計しています。故にきわめてシンプルな形態を採用することが多くなります。切妻屋根(三角屋根)などがそうですが、それは得てして古くからの工法でもあり、現代においても馴染みのあるものです。そこから少し先に進めた先進的なデザインにもチャレンジしようとしていますが、まずは無理なく現代木造で実現できるスタンダードを確立していこうとしています。


地元の木を使う

非住宅木造 建築設計

また、私たちは兵庫県産の木を使うことにもこだわりがあります。建物を建てる際には地元の木を使い、それがさまざまな施設で実際に直接手で触れたり、足でその感触を確かめることができることが大切だと考えています(特に子供は正直なもので、例えば硬い無機質な床には寝そべりませんが、木の床ならすぐに座りこんでいます)。

そのためには、柱や梁などに使われる木材の規格や流通について、しっかりとした知識を有している必要があります。これらのことを設計の初期段階から意識してプランニングすることではじめて適切な柱や梁のサイズ・間隔を決めることができ、コストパフォーマンスの高い合理的な設計となるのです。特にコストは建築費が上がっているなか非住宅の木造建築を広めていくうえで非常に重要なポイントとなります。林業と建物を使う人を有機的に結びつけることが森を守ることにもつながります。


木の耐久性

非住宅木造 建築設計

木をふんだんに使った建物を適切に維持するには、とにかく水はけの良さが重要です。雨水や湿気が木材内部に滞留する設計や施工をしてはいけません。現代の建築設計の流れはこの理屈に完全に逆行しています。昨今建てられる多くの木造建築物は、外壁や屋根、各部の取り合い部分など、すべて密閉するよう作られているからです。そうする方が施工の手間も省けてコストが抑えられることが理由に挙げられます。ただ、そのようにして設計された建物は見た目にも単純で面白みに欠けます。そぎ落とされた〈シンプル〉と単なる〈単純さ〉とは似て非なるものなのです。

伝統的な木造建築の考え方を理解して設計することで、研ぎ澄まされてシンプルな美しさは獲得されます。つまり、建物を構成する部位の出来るだけ多くを木のまま露出することが大切です。もちろん、注意すべきことはあります。外壁に木を使えば味がありますが塗装は数年ごとにしなければオイル分が抜けて木はすぐに傷んでしまいます。ですので、頻繁にメンテナンスをすることができる施主である必要があるので、土壁などメンテナンスの手間がほとんどかからないものを採用するなど工夫は必要です。


学校施設やビルなど、非住宅木造の建築の設計には、木やその生産・流通にいたるすべてに専門的な知識と経験が必要となります。

ご興味のある方は、木造建築の設計経験が豊富な平賀敬一郎建築研究所にお気軽にご相談ください。


木造非住宅についてのブログ

住宅以外の建築物を木造で建てるのに気を付けないといけないポイントなどをブログにまとめていますよろしければご覧ください。