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建築家の役割

住まいのコンシェルジュ

コーポレートコンシェルジュというサービスがあると新聞で読んだ。どのようなサービスかというと、企業に常駐したコンシェルジュがそこで働く人たちのプライベートな悩みや問題を解決するというもの。簡単に書いたが実際には内容は多岐にわたり、子育てから介護、語学を磨くための旅行先の提案、果ては休日に釣りに行くからマグロ漁船を紹介して欲しいといったものまである。もちろんたくさんいるコンシェルジュにはそれぞれに得意分野もあるだろうし、うまく情報共有しながら顧客をサポートするのだろう。人生経験が豊富な中高年にも活躍の場がある。忙しさのなかで埋没しがちな個人の欲求や要望をうまくすくい上げて手助けするとても良い取り組みだと思う。

 

では私たち建築設計士、特に住宅設計を主とする建築家というのはどうだろうか?

一般的には建築家というのは技術職としてとらえられており、それは間違いではないのだが、それだけでは足りない。先述したようなサービス業としてのコンシェルジュのような姿勢が求められる。

家を設計するということは、その家族の快適さや利便性、デザインの好みを満足させるといったことだけでなく、ローンや税金の相談にも乗ることになる。それらはすべて何十年というスパンで考えられることであり、家族構成や社会的立場の変化といったことまで想定しなければならない。実際、施主はまず最初にそういったことを相談してくる。この部分を「私は技術屋だから」といってきちんと向き合わないでいると施主を満足させられないだけでなく、建築家として必要なスキルを身に付けないまま歳をとっていくことになる。

サービス業としての視点

建築家は、いかに施主の細かなニーズをくみ取り、悩み事を解決するかが重要だ。かつての技術やデザイン一辺倒な重厚長大型の仕事の仕方から、“個々人の事情”に深く配慮した仕事が求められる。私生活の支援とまではいかなくとも、より多くのテーマやコンセプトで施主の理想の実現をお手伝いする。そのために私たちの事務所では、ベルサイユ宮殿のような優雅で格式ある生活を望む方や、子育てを効率化したい方、ガレージハウスで趣味に没頭したい方、贅沢なおひとり様向けの住宅など一般的なものからニッチなものまでいくつかのブランドを用意している。これは私たちが徹底して顧客重視の姿勢でブランド開発に取り組んできた結果だ。

 

また、昨今では古い建物を再生させる試みが増えているが、これなどはその建物の状態や法適合の調査・判断は当然として、どのような使い方なら現代社会のニーズに応えられるかといったマーケティングを含めた考察が重要となる。実際には簡易な修繕のみで完結し、設計業務が不要なケースもあるだろう。そのような状況において“技術屋”であることのみを売りにしているようでは建築家として世の中の役に立つのはむずかしい。

さまざまな職能の方々をゆるやかにつなげ、顧客のあらゆるニーズに応える体制づくりをめざしていきたい。

まずは相談

上記のように、私たちの事務所では様々な相談に最大限寄り添えるよう毎月「住まいの相談会」を開催している。興味がある方はぜひ連絡を頂けると幸いだ。